僕と47都道府県（中国篇）
お次は中国地方である。　距離的には近いのに、行った回数はそれほどではなく。土地勘のない地域も多い。　友人の出身地としてイメージすることが多い場所だ。
①岡山県
僕と47都道府県（13）岡山県　近くて遠い隣県、それは岡山である。　それでも結構回数だけは稼いでいる。　初岡山は小学校6年生だった。　夏休みの終わり頃だったか、父が僕に言う。「家族パスの期限がまだあるから、お前岡山まで行ってこい。」「家族パス」とは、旧国鉄職員の家族用に年に一度、１ヶ月分だけ支給される運賃がタダになる券のこと。今日のJRにもしそんなものがあったら、非難の洪水になるに違いない。　　お盆に家族旅行に使ったものが、まだ期限が残っているからもったいないと父は思ったのだろう。「可愛い子には旅をさせよ。」の諺ではなかった気がする。　それまでも父の使いで鈴蘭台に買い物に行ったり、三宮の祖父母宅に一人で行ったりしていたから、この日帰り旅行に臆する僕ではなかった。　首からぶら下げた財布に家族パスと1000円札を一枚入れ、僕は神戸駅から準急「鞆（とも）」に乗った。（「鷲羽（わしう）」だったかも知れない）今は岡山まで在来線で行こうと思ったら、どこかで乗り換えないといけないが、その頃は多分直通で行けたと思う。　岡山駅に降り立つと、バスターミナルへ。「後楽園」行きがあったので、それに乗った。後楽園にはもれなく岡山城がついてきた。（笑）天守閣に登ったような気がする。帰りは「吉備団子」をお土産に買って家へ戻った。甘党の父は喜んでいた。近所のおばさんが「一人で旅行なんてすごいね。」と言った。もっとも、そのおばさんの家は自家用車族で、鉄道旅行なんてしないのだった。　　それから10年ほどが流れ、僕は盲学校の教員になっていた。職場に若手独身教師の親睦会「チョンガー会」というのがあった。その会が夏休みに倉敷へ一泊旅行するという。実はその会の会長さんと僕とは臨時講師のEちゃんをめぐってライバル関係にあった。会長さんの策略はわざと僕の都合の悪い日程にこの旅行を入れ、Eちゃんを独占しようというものだった。だが、結局Eちゃんは採用試験の勉強で不参加。結局旅行は僕も参加できる日程に落ち着いた。倉敷では「武家屋敷」を巡り、「アイビースクエア」に泊まった。問題はその夜、みんなでスナックに行き、ウィスキーのボトルを注文したのだが、参加者７～８名のうち、「飲める人」は僕だけだったのだ。そのボトルは半分以上僕が飲む羽目になり、Eちゃんがいないこともあって、僕は超ハイテンションに盛り上がってしまった。参加した同僚によると、僕は庄野真代の「飛んでイスタンブール」を絶唱していたという。その歌、僕はうろ覚えで歌えるはずないんだけど・・・アレ？翌日に行った「鷲羽山ハイランド」では二日酔いでメロメロ。ベンチで寝ていた記憶がある。　その盲学校の２年目、チョンガー会の会長はその頃仲のよかったKさんに代わっていた。Kさん、哀しいことに求心力がなく、その年のチョンガー会旅行の参加者は何と僕だけ。二人して行ったのは蒜山。このとき、Kさんの提案で「上蒜山」に登った。この山が三百名山であることが分かったのは30年以上後のこと。よくぞ登っておいたことよ。なお、蒜山には「上蒜山」、「中蒜山」、「下蒜山」があるが、「上蒜山」だったと断定できるのは、山頂に避難小屋があったのを憶えていたからである。　それからさらに10年が経過した。僕は母校であるH高校に異動していた。H高校の1年生は「野外活動」として蒜山に行く。担任した43回生と一緒に僕も参加。宿泊は蒜山の「国民休暇村」だった。食事はジンギスカン焼、オリエンテーリングと大山登山。　43回生を追放された僕は翌年も44回生と野外活動に参加。大山登山は二度目。　3回目の野外活動は51回生まで飛ぶ。このときも大山には登ったが、詳細は「鳥取県」のところで・・・　その後、岡山県には縁のない日々が続き、通過点としてしか使っていない。岡山県には三百名山は「上蒜山」しかないからなのだが、このまま縁なく一生が終わるのか、と思っていたら、思わぬことで行くことになる。　それはコロナが蔓延中のできごと。いつも通っていた西代の「常磐アリーナ」のプールが政府の「非常事態宣言」の影響で閉鎖になってしまったのだ。　その閉鎖は３ヶ月くらい続いた記憶があるが、トレーニングの一環としてプールを位置づけている僕としては耐えがたい日々だった。兵庫県はダメとして、どこかに開いているプールはないのか？大阪は無理みたいだ。ところが・・・岡山市にある「岡山県営プール」はどうやら営業している模様。とにもかくにも、１回行って見よう。　西明石から新幹線に乗り岡山へ。バスもあるようだが、１時間ほどかけて歩きプールに到着。すると、受付に貼り紙。「岡山県民のみ利用可能です。利用希望者は住所をご記入ください」。アチャー、でもわざわざここまで来て尻尾を巻いて戻れない。僕はそこに「岡山市朝日町何番の何」と書いてこっそり入場。「朝日町」というのは、「岡山朝日高校」から連想したのだが、後に調べてみると、岡山市に朝日町なんてなかったのだ。しかも当時岡山市はすでに「政令指定都市」だったので、区名を書かないといけない。スタッフに咎められなかったのが幸いだった。岡山県営プールは巨大な50メートルプールで、常磐アリーナと違って、「横向きに泳ぐ」から、広いコースが10本くらいとれる。往復１万円かけても来る値打ちがあると思ったが、程なくここも閉鎖され、１回しか利用できなかった。　日本で一番晴天率の高い「晴れ県」岡山。今後、何かの縁は生じるのだろうか？
②鳥取県
あれは教員になって間もない頃だった。　４年ぶりに中学校の同窓会をやろうという話が持ち上がり、いつの間にかその幹事に選ばれていた。そのうち、男性メンバーがH君とＳ君と僕である。言い出しっぺはＨ君であったように記憶する。今回の話とは関係ないが、女性メンバーはＹさんとＯさんで、二人とも僕のＨＰに一度は登場している。　Ｈ君は地元唯一の洋品店のボンボン（三男）である。僕とは一緒に漫画を書いたりした仲。もっとも財力のある彼と違って、僕の方は用紙や筆記用具も満足に買えず、すぐに脱落してしまった。（涙）　Ｈ君、その当時は銀行員だった。後に特定郵便局長の娘に婿入りし、郵便局長におさまって羽振りの良い生活を送っているようだ。　Ｓ君は家がすぐ近所で、小・中学校のみならず高校まで一緒だった。僕と違って先生も一目置く優等生キャラで、一部女子からは「理想の男性」とまで言われていた。中学校の数学教員になっており、教師仲間でもあった。　そのＨ君が「鳥取旅行」に一緒に行かないかと誘ってきた。最終目的地は小学校４年生のとき担任だったＭ先生宅である。僕もＭ先生には年賀状くらいは出していたが、Ｈ君はしばしば連絡を取っていたらしい。　晩秋の一日だったと思う。Ｈ君の運転する車に僕とＳ君が乗り、出かけた。岡山県経由で鳥取県に入り、三朝温泉で一泊した。ラジウム温泉につかった後、夜の街に繰り出した。「一次会」までは一緒だったが、その後、Ｈ君とＳ君は「夜の店」に行くと言い出した。　僕はパス。今もだが、「あの種の女性」は生理的に受け付けないのだった。　翌日、鳥取砂丘を見学後、Ｍ先生宅に向かった。Ｍ先生はまだアラフォーくらいだったと思うが、すでに結婚されて教師は辞めておられた。そのとき会った旦那さんは鳥取県教育委員会の指導主事とかで、保守的な方だった。教職員組合に批判的なことをさんざん言われるので、二人とも組合に入っている僕とＳ君はちょっと尻がむずがゆかった。Ｍ先生は、「鈴木君は目がクリッとして性悪な印象だった。」と言われた。別に誰かをいじめたわけでもないのに、「性悪」なんて言われるのは正直心外だった。　実はこのとき、僕はＨ君らと一緒に神戸には帰らなかった。こちらへ出てきたついでに、島根県の松江に住む大学時代の友人に会いに行こうと思ったのだ。そのときの話はまた「島根県」のところで。　　次に鳥取に行く機会は、ほぼ十年後である。岡山県のところで書いたが、Ｈ高校の「蒜山野外活動」。メインイベントが「大山登山」だった。（蒜山は岡山県だが、大山は鳥取県。）大山には結局３回も登った。登山道がよく整備されていて登りやすい山だった。最高地点は崩壊のため立入禁止。お天気がよければ日本海がよく見えるのだが、見えたのは１回だけだったように記憶する。　蒜山野外活動のもう一つの目玉行事はオリエンテーリング、だったのだが、51回生を引率したとき、僕がその行事の担当をしており、生徒の実行委員を束ねる立場だった。彼らの一人が、オリエンテーリングの代わりに、「鳥取砂丘大運動会」をしてはどうかと提案した。僕はそれを面白いと思い、支持した。具体的に「因幡の白兎」（生徒が作った馬の列の上を歩く競技）「砂丘段ボールそりすべり」などの種目を企画した。それを学年会議で提案したら、先生方は「そんなのシラけるだけだろう。」と懐疑的だった。　ところが当日、この行事は意外なほどの盛り上がりを見せ、大成功だった。競技の内容もさることながら、ＭＣをつとめてくれたＹ君のアナウンスが見事だった。Ｙ君、勉強はダメだったが、卒業後芸能界に入り、中堅歌手として活躍している。（芸名・サカノウエヨースケ）ちなみに、彼は僕の中学校時代の同級生の息子である。彼女もまた僕のＨＰに登場済みだ。　なお、今同じことをやろうとしても絶対できないだろう。コンプライアンスが厳しくなり、砂に落書きしただけでマスコミが採り上げ猛バッシングを受ける時代になった。落書きなんて雨が降ったら消えてしまうのに・・・　　それから10年以上が過ぎた2009年、突然鳥取県と復縁したきっかけは、あの忌々しい「教員免許更新講習」である。「更新しなければクビ」の状況下、僕がお世話になったのは自宅から最近場の「神戸国際大学」。参加したのは「大山山麓での野外活動」。　貸切バスで向かった。泊まったのはＳ女子大のセミナーハウス。女子大生が寝た同じフトンで寝させてもらうという涙チョチョ切れる体験だった。ちなみに講義はつまらなかったが、飯盒炊さんは愉しんだ。　　次に行くことになるのは、やはり三百名山関連である。鳥取で大山以外の三百名山と言ったら、「扇ノ山」と「那岐山」である。　晩夏の一日、61歳になっていた僕はピンクちゃん同伴で、神戸から鳥取行きの高速バスに乗った。バスが鳥取駅前に着いたのは何と夜中の１時過ぎ。しかも土砂降りの雨だった。どこに行くことも叶わず、バスターミナルのベンチでごろ寝して朝を迎えた。登山口まではタクシーを使う予定で、乗ったのはいいが、運転手が道を知らず、散々迷ったあげく「ガソリン切れ」でとんでもなく遠くで降ろされてしまった。そこから登山口まではひたすらピンクちゃんを押して坂道歩き。疲れたの何の。扇ノ山山頂までの登山の方が遙かに楽だった。　下りは楽ちんかと思いきや、ピンクちゃんのハンドルを固定するネジが効かなくなって立ち往生。いくら修理を試みてもダメ。ハンドルがグラグラでは押して進むこともできず、泣く泣く彼女とお別れする羽目に。生まれ変わったら中国製じゃなく日本製に生まれろよ。　その１ヶ月後、僕は新調したホワイト君とともに、智頭急行経由で鳥取に向かっていた。あわくら温泉元湯のゲストハウスで一泊。ホワイト君は快調に走り、登山口まで僕を運んでくれた。那岐山はお天気も良く、快適な山行だった。　あれから数年、いくらスタバができたとはいえ、あの砂場に戻る気にはなれそうもない。鳥取もまた、「近くて遠い」隣県なのだった。
③島根県
友人２名と鳥取市に住む恩師M先生を訪ねた後、私は彼らと一緒に帰神せず、列車で島根県の松江市に向かった。　それは友人Ｈ君を訪ねるためである。ちゃんと手土産も用意していた。神戸牛の味噌漬けだったように記憶している。　Ｈ君とは大学の生物系で一緒だった。大人しくて温厚な人で、口の悪い友人は彼のことを「皮なし」と呼んでいた。その理由は、伊藤ハムの「パルキー」（皮なしウィンナー）に名前が似ていたからだ。　植物専攻だった彼は、大学院に進む気が最初からなく、公務員志望だった。最終的に故郷である島根県の公務員に採用された。当然のごとく、松江の実家に戻っていた。「ぜひ遊びに来て。」という彼の言葉に甘えたのと、一度島根に行ってみたいという好奇心もあった。　松江には午後に着いたと思う。その日はもちろん休日だったはずだが、彼の方に用事があり、訪問は夕方の予定だった。それまでの時間潰しに、松江駅前のパチンコ屋に行った。店内はガラガラだった。その頃のパチンコはまだ「手打ち」の時代で、ときどき暇つぶしに寄っていた。チューリップにダブルで打ち込んで開かせると、しばらくはフィーバーが続くのが楽しかった。機械打ちになってからはその楽しみがなくなり、ほとんどやったことはない。　Ｈ君と会って、「パチンコ屋がガラガラだった」と言うと、「昼間からパチンコやる人なんて、こっちにはいないよ。」と言われた。休日なんだけど・・・　その後、松江市内・宍道湖畔の料理屋に案内された。宍道湖特産の「モロゲエビ」というのが珍しかったのを憶えている。もちろん僕は奢るつもりだったが、彼が「お客さんに払わせるわけにいかない。」と彼にしては珍しく強硬に主張したので、ご馳走になることにした。もっとも彼はほとんど下戸なので、こちらもそれほどたくさん飲んだわけじゃない。話した内容はほとんど忘れてしまったが、中ノ海の淡水化について話した様な気がする。　その夜はＨ君の家に泊めてもらった。実家だが、彼は結婚しても両親と同居する予定だそうで、事実上彼のマイホームだった。風呂が混合水栓の給湯システムで、まだ石油ボイラーで沸かしていた僕の実家に比べて進んでいた。松江より押部谷の方が田舎であることを実感した。僕が念願の一戸建てを持つのはそれから半世紀近く後のことなのであった。（涙）　Ｈ君は県の農事試験場に勤めており、僕が学校の農園の担当だった頃、いろいろアドバイスをもらったり、交流は細々ながら続いている。　その後、島根に行く機会はなかなか訪れなかった。だが、この県には「三瓶山」という二百名山があり、40年後に漸くチャレンジが決定する。　2018年10月末、私は列車を乗り継ぎ、島根県の大田市（「おおた」ではなく、「おおだ」）に到着。駅前には宿が取れず、数㎞離れたビジネスホテルへ。食事はコンビニ食だった。　翌日、松江駅前に戻り、バスに乗って「三瓶自然館」へ向かった。ここは「青少年野外活動センター」みたいな場所である。こういった施設が登山口になっていることはアルアルで、例を挙げればきりがない。　そこからまずは「男三瓶」に登り、→「子三瓶」→ 「孫三瓶」→「女三瓶」と縦走した。男三瓶の枯れススキ野が美しかった。自然館で帰りのバスを待ち、大田駅からホテルに戻った。　翌日、実はもう一つのネタを用意していた。それは世界遺産「石見銀山」の見学である。　行きはバスがあったが、帰りは交通の便があまり良くなくて、かなり長い距離を歩いた記憶がある。　現地ではガイドさんに案内して貰った。500円だったような・・・「女工哀史」ならぬ「抗夫哀史」を知ることができた。　それからは島根に行く機会はない。「出雲大社」には用がないし、一度行って見たい「萩・津和野」や「隠岐の島」にもなかなか足が伸びない。三百名山が片付いたら、「サンライズ出雲」に乗ってみるのもいいかも知れない。
④山口県
山口県への観光はたった一度。それは中学校２年生の家族旅行だった。僕が記憶している家族旅行は３回のみ。中１の箱根、中２の山口、中３の九州である。　計画してくれた親には申し訳ないが、どれにもあまりいい印象が残っていない。それは行先が問題なのではなくて、盆休みという一番暑い時期だったのが一番の原因だろう。　中１の箱根は、ちょっと標高の高いところに行ったことと、往復新幹線を使ったことで、そんなに暑かったイメージはないが、中２と中３は最暑だった。　父はケチだから、決して指定席をとることはなかった。よって、往復の列車は自由席。盆の帰省・旅行ラッシュの時に自由席なんて、座れるわけがないのである。　神戸駅から乗車するが、当時の急行列車は大阪始発がほとんどで、満員でやって来る。山口まで行こうとすると、（おそらく一本では行けなかったろうが）何時間も立ち席なのだ。妹二人はまだ小学生だったから、通路に立っていると、「同情票」が入り、席を譲ってもらえたり、ときには膝の上に座らせて貰ったりしていた。中学生の僕には当然そういうことはないし、そういったお情けにすがるのは嫌だから、いつもデッキに立っていた。　それでも、ドア横とか壁際ならもたれることができるから少しは楽ができる。だが、それさえも手に入らないと、進行方向斜めに両脚を広げて立たなければならない。でないと、揺れたときにこけてしまう。冷房も効いていない車内で数時間そのポーズなんて考えただけで地獄だ。何でこんなしんどい思いまでして旅行しないといけないのか。　そんなこともあって、僕は高校生からは家族旅行を「拒否」した。妹たちは高校卒業後も家族旅行を続けていたから、随分いろんな所へ行けたようだが、僕がいつの間にか旅行嫌いになって、時間のたっぷりあった学生時代に一度も観光旅行をしなかったのはこの「乗り物嫌い」が昂じたものだろう。　その唯一の山口県旅行は、湯田温泉（もちろん国鉄の保養所）に泊まり、秋芳洞（正しい読みは「あきよしどう」）に行くものだった。　この秋芳洞だけはよい印象として残っている。洞内は「天然のクーラー」でとても涼しかったし、様々な形の鍾乳石や、大ホールのような奇観、本当にとても迫力があった。　後日、横溝正史の「八つ墓村」を読んだとき、鍾乳洞の場面でとてもイメージが湧いたのは、この秋芳洞の経験が基になったものだろう。　この旅行の帰り、母と妹二人を先に帰らせて、父は「呉線に乗ろう」と僕と二人広島から三原まで呉線に乗せた。何でそんな寄り道をしたのか分からないが、山陽本線の列車と違って、座れるのがありがたかった。父もきっと座りたかったのか？海がよく見えたことくらいしか記憶にない。　　これだけではあまりにあっさりしすぎなので、山口県防府市出身の大学時代の友人Ｈ君について書こうと思う。島根県で出てきたＨ君とは別人であり、鳥取県で出てきたＨ君とももちろん違い、愛媛県の瓶ヶ森に一緒に登ったＨ氏とも違う。（単なる偶然と言ってしまえばそれまでだが、私の友人のイニシャルにはＨとＦ、すなわちハ行が非常に多い。）　Ｈ君は小太りでいつもニコニコしているイメージ。一度も怒った顔を見た記憶がない。教養部時代のクラスも同じで、生物系でも一緒だった。自主ゼミや自治会等で一緒に活動していたが、どちらかと言えば先輩方の「圧」をまともに受け止めてしまいがちな僕と違って、ヘラヘラと受け流していた印象である。　卒業後は九州大学の大学院に進み、福岡に住んでいた。ある日突然連絡が来て、「今度大阪で学会があるから、君の家に泊めてくれないか。」というリクエストだった。その頃僕はまだ独身で実家住まいだったが、ＯＫした。　最初、三宮で彼と落ち合い、行きつけのパブレストランで会食した。（その頃はボトルキープなんてしてたっけ。）その後、押部谷の実家へ案内したが、あまりにも神戸の奥地なので驚いたかも知れない。　その後は会う機会もなく、年賀状交換だけ続けていた。ある年の年賀状に、「僕は今春からは九大の助手になっていると思います。」とあった。　ところが、次の年の年賀状には、「福岡県立大牟田高校の教師になりました。」と・・・・大学のポストをつかむのは当時なかなか難しいことだった。　住所も大牟田になっており、その後結婚して一度大牟田市内で転居したようだった。　５０代までは年賀状も続いていたのだが、ある年突然「転居先不明」で戻って来た。律儀な彼のことだから、転居したら連絡くらいくれそうなものだが。メタボ体型の彼、もしやして・・・と悪い想像が浮かんだ。　それからは音信不通のまま時間が経過した。元気でいてくれたらな、と願う。　アンアン・ノンノ族で有名になった萩・津和野。津和野は島根県だが、萩は山口県だということをさっき知った。交通の便が悪いせいかインバウンドではあまり名前を聞かないが、現在はどんなん、かなー？（仁鶴風）　岩国の錦帯橋にも行っておらず、下関のフクや海鮮もまだ食していない。興味は尽きない山口県だが、今後行くチャンスは・・・きっとあるよね。
⑤広島県
中国地方のしんがりは広島県。　実は47都道府県の中で、観光が一番最後になったのがここである。　有名な観光地で、日帰りでも行こうと思えば行ける距離にありながら、なぜ最後になったのかと言うと、いくつか理由が考えられる。　①生徒としても、教師としても何度も修学旅行に行っているが、その行先にはなかったこと。微妙に近すぎるのだ。かと言って、校外学習で行くには遠すぎる。　②親が軍国主義者だからなのかどうか分からないが、家族旅行で行くことがなかったこと。広島というと、原爆関連を避けるわけにはいかず、太平洋戦争を「大東亜戦争」なんて呼ぶ人達はここを避ける傾向がある気がする。　③日本百名山が存在しないこと。ただし、三百名山はあるので、遅かれ早かれ行くことにはなったろうが・・・　そんな私がついに行く気になったのは、半年後に60歳定年を控えた2015年夏だった。　新幹線で広島に到着、すぐに向かったのは宮島だった。　ここの名物、「あなご飯」を食した後、フェリーに乗る。　宮島は満潮に近く、大鳥居は海上にあった。　もちろん、厳島神社を拝観。インバウンド客の人気ではベスト5に入るらしいが、僕の感想はビ・ミョーだった。海の上にあるというだけで、何がいいのかよく分からない。　心残りなのは、「弥山」に登らなかったこと。暑さがピークの時期で、歩いて登るには大汗かきそうだし、かと言ってロープウェイに乗るのも気が引けた。もし登っていれば瀬戸内海の眺望が見事で、フォトジェニック的にも最高だったろうが、今度行くなら別の季節にしようと思った。　その日の宿は広島市内にカプセルホテルをとっていた。路面電車で戻る。夕食は宿に紹介してもらったお好み焼き屋へ。もちろん、美味しかったのだが、お好みと麺は別々に食べたいとついつい思ってしまう。ちなみに大阪風の「モダン焼き」も好きじゃない。　翌日は広島駅に荷物を預け、レンタサイクルで回った。　もちろん、原爆関連は外せない。原爆ドームが残ったのは爆弾が真上で爆発したせいだと、団体旅行のガイドの話を横聞きして知った。建物は上からの衝撃には強いらしい。原爆資料館は予想はしていたものの感銘を受けた。偶然教え子のN君に出逢うというハプニング。　次は広島城へ。広島にお城があるというイメージはあまりなかったが、まあ、普通の天守閣だった。　遅いお昼は「牡蠣料理専門店」へ。ランチコースに白ワインを堪能した。飲酒運転になるので、自転車は先に返却しておいた。　後は「もみじ饅頭」をお土産に帰る。もちろん家族じゃなく同僚向け。こういうベタな広島旅行だったが、47都道府県のコンプリートにはふさわしかったと思う。　前述した通り、広島には道後山と吾妻山という２つの三百名山が存在する。　そこにチャレンジしたのは2018年の６月だった。その年の３月には教職を完全リタイアし、自由の身になっていた。　岡山まで新幹線。そこから新見線に乗り換え向かったのはいいが、新見で別列車に乗り換えるべきところ、別ホームに停まっていた列車を見落とし、乗りそこなうというとんでもないチョンボ。次の列車を待っていたら到着が５時間遅れになると判明、頭がホワイトアウトした。そこで浮かんだ一か八かの奇策は・・・タクシーで乗りそこねた列車を追いかけるというもの。この作戦はギリギリ成功し、備後庄原には予定通り到着できた。　備後庄原では、「かんぽの宿」に連泊した。食事はついておらず、近所のお好み焼き屋へ。朝食と昼食はコンビニで調達できた。　次の日、道後山へ向かおうとするが、タクシーがどうしても見つからない。止むを得ず、相当の距離を徒歩で向かう。最短で行けば８㎞ほどだったが、僕は道を間違え、10㎞以上のアルバイトになった。まだ「ヤマップ」のアプリを知らない頃で、正確な地図もないため、こんなことが起きる。幸い、道後山の登山自体は楽勝で、帰りは何とかタクシーを見つけることができた。　連泊した３日目、吾妻山へ向かう。ここはさすがにタクシーでないと行けない距離だ。登山口は中腹にあるリゾートホテルだった。ここがあるのを知っていたら宿をとったものを・・・小雨模様の天気だったが、ここの登山も楽ちんコースで、美しい花を愛でてこれた。タクシーでかんぽの宿に戻る。　帰りは広島周りで帰るのが早いようなので、そっちにする。鉄道料金は多少かさんでも、乗り継ぎのリスクも避けられる。　さあ、もう一度広島に行く機会があるだろうか？単独ではおそらくないような気がする。孫と一緒に弥山に登れるなら登ってみたい。もちろん、向こうの気持ち次第である。
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