| 【MyFavoriteMusicianⅡ】 |
| （15)冬の？広瀬香美 |
| あらためてデータを調べて見てびっくり。 広瀬香美が54歳？そうか、もうそんなになるのか。諸行無常である。 まさに鮮烈なデビューだった。 1992年と言えば、私は34歳だったことになる。 33歳でちょっとした病気をした。子供からオタフク風邪をもらって、それだけならともかく、直りきらないうちに無理して走り、「ウィルス性心筋炎」を発症。しばらくは不整脈に悩まされた。 もう少しでフルマラソンサブスリーに迫っていたのに停滞を強いられる。まずは命の方が大事だし・・・リハビリとしてスイミングを始めたのだが、未だに続いている。 そんなとき、街角から元気な歌声が響いてきた。 「愛があれば大丈夫」。 あるラジオ番組を思い出す。 ある女性音楽評論家が語っていた。 「この広瀬香美ちゃん、ちょっと並の新人と違うんですよ。パワーがもう、それは。」 確かにパンチのある声は群を抜いていた。音大卒、と聞いて、きっと声楽をやっていたんだろう、クラシックには声質が不向きだったからポップス界に進出したのかな？くらいに考えていた。 だが、それは間違いだった。 去年の暮れ頃だったか、「しくじり先生」という番組に彼女が登場した。離婚歴のある彼女だし、昨今独立を巡って事務所ともめていたから、その辺りの経緯を告白するのかと・・・ だが、その内容も予想外だった。 彼女が出たのは国立（こくりつじゃねえよ）音楽大学の「作曲科」。幼い頃から音楽の英才教育を受けていた彼女は、作曲家を目指していたのだ。だが、大学では彼女は「劣等生」だった。教授からはプロになるのは無理と引導を渡されていた。 だが、彼女はそれにめげず、「マイケル・ジャクソンのために曲を書く」ことを目指してアメリカに渡る。そこで受けたボイストレーニング（英語ではVocal Lessen）があの歌唱力の基礎になった。 マイケル云々は実現しなかったが、帰国後、作品のデモテープを各社に送ったところ、ビクターのプロデューサーの目に止まり、シンガーソングライターとしてデビューが決定した。 「愛があれば大丈夫」に続き、「ロマンスの神様」、「幸せをつかみたい」、「ゲレンデがとけるほど恋したい」が次々とヒットし、不動の地位を築く。 これらのヒット曲がすべて12月にリリースされ、スキー場でもてはやされたことから「夏のTube」と対比して、「冬の女王」と呼ばれるようになる。 この頃、私はゲレンデスキーを卒業、いや中退してクロスカントリースキーに転向しかかっていたのだが、確かにゲレンデでは広瀬香美がやたらにかかっていた。彼女の歌にあやかってか、多くの若者がスキー場に押しかけていた。 だが、彼女自身は寒いのは苦手で、ウィンタースポーツは全くやらないという。 20代半ば、彼女は人気俳優と結婚、まさに歌の文句通り順風満帆な人生と思われた。 だが、イケメンの人気俳優が不倫と無縁なわけない。程なく離婚。 メディアへの露出も減り、若者達も彼女の名前を知らない世代に移りかけていた。だが、一発屋芸人と違って、彼女は過去のヒット曲の印税だけでも十分食っていくことが可能だろうから、不遇な毎日、というわけでもなかったろう。実際、彼女は「ボイス・トレーナー」として、学校まで設立してバリバリの毎日を送っていたようだ。 だが、「歌手」としての広瀬香美も決してあきらめたわけではない。そんな折、事務所とのトラブルが報道される。 独立を望んだ彼女に対し、事務所側は、もし独立するなら「広瀬香美」の芸名は使わせないと脅したのだ。芸名の著作権が誰に属するかなんて法律的な問題は私にはわからない。だが、吉本興業にせよ、ジャニーズ事務所にせよ、日本の芸能事務所はとにかく前時代的なブラック企業であり、NPBがやってるような「FA制度」みたいなものを創設すべき時期に来ている気がする。 その訴訟の経緯はよく知らないが、「広瀬香美」は生き残った。 そして、時代はSNSとYouTubeへ。「広瀬香美が〇〇を歌ってみた」的な動画が世間に広まるようになった。最近ではものまね芸人のミラクルひかるとのコラボが話題をさらった。 そこからしか広瀬香美を知らない世代には、もうすっかり「おばさんキャラ」としての彼女が定着していることだろう。だが、キャピキャピのギャルだった頃を知る私としては隔世の感があるのも事実である。 そう言えば、「広瀬香美似」を自称する友人がいたが、彼女も40代に突入しているはずだ。今頃どうしているんだろう。 あえて「一番好きな曲」は選ばない。上記以外に耳にとまった名曲をいくつか挙げておく。 「愛はバラード」 「Dear・・・」 「promise」 「ピアニシモ」 「恋のベスト10」 なお、「しくじり先生」によれば、彼女が最も自信があり、世間に認めてほしいのは「作曲力」だそうである。 （次号は伊勢正三と風） |
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