僕と47都道府県（近畿篇）
　さて、いよいよお膝元の近畿地方に入る。地元・兵庫県についてはあまりに書くことが多いので、「阪神間」と「それ以外」に分けてお送りする。
 ①兵庫県・阪神版
　僕が「神戸っ子」を自認するのは、単に神戸生まれ、神戸育ちだからではない。
　６つの区（実質５つ）に住み、３つの区に勤め、マラソンマンとして、津々浦々を走り抜けてきたものとして、北区と西区の一部を除いて完璧に土地勘をもっている自負があるからだ。
　生まれは神戸市生田区（現中央区）下山手通。そのまま住んでいればシティボーイとして成長したろうが、祖父母の商売の失敗に伴い、垂水区押部谷町（現西区）に転居。高校生までをそこで過ごす。高校は長田区のH高校に通う。
　大学４年間と就職１年目は神戸から出ることになる。
　大学時代の帰省は押部谷でなく、兵庫区の祖父母宅にしていた。押部谷はあまりに遠く交通費がかかるので。
　その後実家のリフォームとともに西区に戻り、結婚までは実家住まい。
　その間、教員として垂水区の盲学校に勤める。
　結婚して西宮市に移り住む。15年間は西宮住まい。その間、北区のＳ高校と長田区のＨ高校（母校）に勤める。
　西宮は保育所事情もよく、子育てには最適だった。武庫川の河川敷と湾岸道路、東六甲のドライブウェイはマラソンマンとしての成長に欠かせなかった。
　長年住んだ西宮の賃貸を出て、東灘区にマンションを購入、転居。ほぼ同時に西宮市のＨ養護学校に転勤。6年間勤める。
　Ｈ養護学校は西宮市と言っても、宝塚市、尼崎市、伊丹市の境界がすぐそこであり、それらの街とも触れあう機会が多くあった。特に尼崎市は家庭訪問で度々訪れ、親近感の湧く街である。
　その後北区のＫ養護学校に異動し、退職までの14年間を務めた。
　北区は広大で、家庭訪問などで数多く回ったと言っても、まだカバーしきれていない地域がある。
　退職が目の前にちらつく中、一人暮らしの願望断ちがたく須磨区の賃貸に転居。３年前にはその近所に中古一戸建てを購入、現在に至る。
　単に住んだ、とか、勤めた、ではない。帰勤はほぼランニングだったため、道の詳細は車族以上に知っている。
　灘区は唯一居住も勤務もしていないが、ランニングコースとして頻繁に通っていたから、幹線道路はほぼ掌握している。
　また市街地のみならず、六甲山系の山々もほとんどの登山コースは踏破している。
　六甲全山縦走は十数回完走し、タイムトライアルでは５時間47分という記録をもつ。
　それほど神戸に愛着をもつ僕だが、最近の知事選の結果にはガッカリしている。
　はっきり言う。神戸という土地は好きだが、神戸市民は大嫌いだ。
　香川をうどん県、大分を温泉県と呼ぶなら、兵庫はヤクザ県だ。
　倫理的に許されないことを堂々と支持する。そんな輩は親類だろうが、友人だろうが、教え子だろうが今後付き合うつもりはない。
　ただ、今住んでいる須磨区（ニュータウンじゃなく旧市街）は最高だ。ここに骨を埋める覚悟。あと何年かは・・・分からぬが・・・
　
②兵庫県・その他版 
　兵庫県はしばしば「ヒョーゴスラビア」などと揶揄されたりする。
　特色の違う多くの地域の融合体という意味だ。
　他府県でも福島などは会津、中通り、浜通りと3つに分かれていたり、と言うような例はあるが、神戸、阪神に加え、但馬、西播、東播、丹波、淡路と大きく分けても７つ。中播と北播をさらに区分すれば９つということになる。これ以上に多いのは北海道と長野県くらいではなかろうか。
　まずは但馬から。実は、僕の父親のルーツは豊岡市である。8人兄弟の4番目だった父は親類づきあいが苦手で、豊岡の田舎を訪れたのは数えるほどしかない。その父の血を引いたのかどうかは分からないが、僕も伯叔父や従兄弟とはほとんど交流がなく、今に至っている。ただ、一度だけその係累が役に立ったことが・・・
　Ｓ高時代、卓球部の顧問をしていて、ダブルスのペアが新人戦の県大会に勝ち上がったことがあった。その会場は豊岡。泊まりがけで引率しないといけない。
　ところが、時期は12月、豊岡に向かう播但線の列車が大雪で立ち往生してしまった。いつ運行再開するかも分からない。もし着くのが深夜にでもなったら、試合に影響が出てしまう。そこで思いついたのは、豊岡の従兄弟に連絡をとって、迎えに来てもらい、泊めてもらうこと。携帯なんてない時代だったが、列車内に公衆電話があり、何とか連絡がつながった。選手と3名、お世話になり助かった。
　そして、但馬との縁は親類よりも「スキー」の方が濃い。神鍋の民宿にに何度も泊まり、周辺のスキー場で研鑽を積んだ。初心者から初級者くらいまで上達できた。個人的には「名色」のゲレンデが一番好きだった。
　Ｓ高時代には1年生入学直後の5月、「合宿訓練」をやはり神鍋でやった。卓球部の合宿も神鍋でやった。また、Ｈ高山岳部のスキー合宿でもお世話になった。キャンプ場に無料でテントを張らせてもらった上に、風呂にまで入れてもらい、感謝感激。
　そして、悲惨な黒歴史として残っているのが、ある年の総体。当時、卓球部と山岳部の顧問を掛け持ちさせられており、姫路で卓球部の試合を見届けた後、ハチ高原での山岳部総体に駆けつけないといけなかった。八鹿の駅に着いたときにはハチ高原行きのバスはすでになかった。30㎞の距離を夜通しかけて歩き、ようやくキャンプ地に到着。翌日はさすがに山に登る気力は出なかった。　

　西播は、教科の観察会や組合の学習会で何度か泊まりに行っている。竜野とか新宮とか、その周辺である。山登りも書写山、雪彦山、笠形山、的場山など登った。姫路城は小学校のときに行ったきりでその後は入場していない。また、姫路に泊まったこともない。　ああ、そう大学の入学説明会で相生の姫路工業大（現兵庫県立大）に行ったことがある。不便な所だった。
　自転車仲間と行った「ツール・ド・ミネヤマ」も忘れられない。峰山高原で起こったドラマについては、ＨＰの「担任通信」でお楽しみいただきたい。
　そして、人生最後のマラソンは赤穂義士マラソン。泊まりがけで行った。公園内周回コースだったが、何とか走りきった。
　教師としては、管理主義色の強い東播・西播には勤めなくてよかったと思っている。同じ兵庫県でも、水と油のように意識の違う地域だ。

　東播は、何と言っても一番つながりの強いのは明石。子供の頃はバスでたまに行っていた。小５のとき、小６の幼なじみに誘われて一度自転車で往復したが、帰りの登りで疲労困憊、二度と行くまいと思った。
　この明石行きのバスの光景が夢によく出てくる。たどり着きそうでなかなかたどり着かない。神戸と明石の境界には壁のようなものがあって、行く手を阻まれるのだ。
　現在はテニス仲間との例会で週１ペースで行くようになった。須磨から行くときには壁はないようだ。（笑）
　加古川は僕にとっては教員採用試験の場だ。加古川中学校での一次試験。加古川東高校での二次試験。運良く突破できたからいいようなものの、もし落ちていたら悪夢に出てくるにちがいない。（笑）
　三木市は押部谷の北側に隣接する自治体だ。子供の頃、そっち方面から通っている友達がいたので、たまに遊びに行っていた。グリンピア三木（現・ネスタリゾート神戸）には校外学習の引率と家族でも一度行った。
　小野市には中学校時代、陸上部の試合で一度行ったきりだ。
　それよりも、何泊、いや何十泊も泊まっているのが加東郡社町である。ここには兵庫県教育研修所があり、中学生時代にも何度か泊まったが、教員になってからは初任者研修に始まって嫌というほど行かされた。認定講習にも行ったし、最後はあのいまいましい「教員免許更新講習」だった。もう二度と行きたくない。石を投げてやりたいくらいだ。

　丹波地方と言えば篠山だ。現在は「丹波篠山市」らしい。「篠山ＡＢＣマラソン」には７回出ているはずだ。（うち完走６回、サブスリー２回）その他、家族旅行で一度行ったのと、Ｈ高校の陸上部の駅伝県大会引率で１回行った。
　あと三田のハーフマラソンには、何と17回も出ている。有名女子選手（ただし現役引退後）に何度も走り勝ったのが自慢だ。山登りや学習会にも何度か行った。今後も何回か行く可能性がある。何にもない街だけど・・・

　最後に淡路である。
　実は淡路島は、僕の「最古の記憶」が残る場所だ。
　その記憶とは・・・
　馬に乗せられ、馬上から見下ろした先には誰か大人がいる。その光景を確かに覚えている。その話を親にすると、それは祖父母に連れられて淡路島に泊まりに行ったときのことだと・・・ひょっとして♪ホテルニューアワジ♪か
　祖父母も両親もキダタロー氏も鬼籍に入った今、確かめようはないが・・・
　ところが、２回目の淡路島までには20年もの歳月が経過してしまう。
　Ｓ高校勤務時、職場のサイクリング仲間と出かけた「ツール・ド・ヌシマ」である。
「タコフェリー」で明石から岩屋まで渡り、島の西岸を南下、沼島を対岸に見渡す「おれんじ荘」に一泊。ここで勃発した「オレンジ坂の決闘」については、ＨＰの「担任通信」でご覧いただきたい。帰りは当時まだあったモンキーセンターから東岸を北上し、僕だけは志築から甲子園フェリーで帰った。
　結婚してからは子供連れで「淡路ファームパーク」へ。数年前には孫と一緒に行った。　教科関係の研修でも行ったし、諭鶴羽山に登ったこともある。元同僚達と沼島に渡って合宿したことも・・・僕にとっては「リゾートの島」である。

　かくして結構しゃぶり尽くした感のある兵庫県だが、実は未だに足を踏み入れたことのない「空白地帯」が存在する。それは、県の中央部、西脇市、柏原市、多可町あたりである。今後行く気になるとも思えないので、永遠に空白のままなのだろう。
　本当に様々な風土が存在するヒョーゴスラビア。あのクソ知事よりは人間性はまともだと思うが、「チトー」にはとてもなれそうにない。　　 
③京都府 
　生まれ育った兵庫県に次いで存在時間の長いのは京都府である。
　もちろん、観光地としての京都には子供の頃から、家族での日帰り旅行、学校の遠足で何回も行っていた。主な行き先は清水寺や知恩院、嵐山などである。
　だが大学に合格し、下宿が決まったのが運の尽きだった。
　大学合格後、親類や知人から「京都の人はえげつないから気いつけや。」と異口同音にアドバイスされたのだが、その「えげつなさ」を実際に体験することになる。
　最初の下宿は吉田山の中腹にある古民家。80近い婆さんが大家だった。
　もちろん、現在のようなワンルームマンションではなく、間借り下宿。８畳一間と言えばいかにも広いようだが、置けるものは限られていた。勉強机と本棚。そして暖房用のコタツ。電気ポットとトースター、これがすべて。コタツはワット数まで300Ｗと指定されていた。300Ｗは通常の電器店では手に入らず、探し回ってやっと手に入れた。何でＷ数を低くするのかと言うと、部屋ごとの電気メーターがなく、電気代は下宿代に含まれるからだ。畳の床は傾き、窓はサッシじゃないから隙間風が入る。冬場は寒くてどうしようもなかった。洗濯は冷たい水で手洗い。後年ヒットしたドラマ、「おしん」のモデルは僕です。（笑）
　そして必要なのが「交通手段」。自転車は小学生の頃から使っていたサイクリング車を神戸から持って来ないといけなかった。無論、運送業者など使えない。自分で乗ってくるしかない。押部谷の奥地からはさすがに1日では無理だ。まず兵庫区の祖父母宅まで乗って一泊し、翌日京都へ向かった。国道２号線から175号線に入り、淀川沿いをさらに北上して、東本願寺に到着したときはホッと一息ついた。そこから下宿までは1時間もかからなかった。
　7月になり、大学が休みになると、「帰省」を強要された。下宿代を払っているにもかかわらずである。もちろん、冷房もない部屋に長居する気もなかったが・・・だから、僕は京都の大学に４年通いながら、「祇園祭り」も「五山の送り火」も見たことがない。
　そして、そんな不便な生活にもようやく慣れた頃、大家の婆さんが「もうわたいも歳で下宿屋も辞めたいので」と退去を求めてきた。実はこれはとんでもない嘘で、新しい下宿人と入れ替えて「礼金」を取りたいという企みだった。だが、世間知らずの僕はあっさりそれに応じてしまい、新しい下宿を探すことに・・・この下宿探しではある先輩に迷惑をかけてしまうことになる。その先輩の下宿に空きがあったので入れてもらうつもりだったところ、父親がクレームを入れてきて向こうの大家と言い争いになり・・・結局、次の下宿は父親が探してきた吉田山の裏側の家になったのだが・・・そこは洗濯機も使えて最初のより快適ではあったが、１年後にまたもや退去を求められる。「息子夫婦と同居したいので子供部屋が必要になった。」と・・・またもや嘘八百だった。
　もっとも、ときどき門限を破ったりする僕自身にも原因があったのかも知れない。父親もいい加減あきれて、京都の下宿はやめ、大阪に住むことになる。その話はまた大阪府のところで。
　京都の人間がすべてえげつないわけではない。京都出身の友人の中には気のいい人もいた。だが、生活の場面場面で「客に説教する店主」だったり、「すぐにマウント取る京都出身の同級生」だったり、京美人にはついぞ縁が無く、４年間を過ごした。
　もし京都市内にに格安の中古物件があったとしても、決して移り住むことはないだろう。
「京都人の腹黒さ」はしばしばマスコミが採り上げる以上のものがある。あそこはあくまで観光地であり、フランクな付き合いを望む人間が住むところではない。
　在学中、卒業後も京都にはたびたび行っている。定番の観光地以外にも北山・東山・洛北、洛南を歩いたり・・・、だが、人と接するのは避けている。不快な思いはしたくないので・・・・・
　山岳部顧問時代に何度か合宿を組んだ。北山では道に迷い、タクシーに頼る情けない展開。清滝でのホタル合宿では雨に降られ、ひどい目に遭ったっけ。
　比叡山は組合青年部の学習会で行ったのと、滋賀県側から登り大文字山に抜けた。最高峰は分かりにくい場所だった。
　　
　京都市以外についても触れよう。何回か行っているのは「亀岡」。学生時代の何とか合宿だったり、自転車旅行だったり、最近登山でも訪れた。
　日本海側で言うと、宮津には一度合宿で行ったような・・・だが、天橋立にはまだ行っていない。Ｈ高勤務時代、同僚とのキャンプでやはり日本海のビーチへ。（地名は覚えていない）このとき、西宮の自宅から自転車で向かったのだが、いくつも峠を越えて190㎞の道のり。これは二度と破れないであろう最高記録だ。日本海の水は澄みきって泳ぐには最高だった。帰りはさすがに体力・気力が持ちそうになく、途中まで車で送ってもらった。
「環境教育研究会」で芦生の森に一度行きましたね。何だか不完全燃焼だったけど。

　高校時代の親友に京都出身のＹ君がいた。今思い出せば、やっぱり自分の価値観押しつけて仕切ろうとする人だった。彼は高２で父の仕事の都合でカナダに移住し、それきりカナダ人になった。でも最終的に社会適応に失敗し、フリーターを続けたあげく、精神的におかしくなってしまったようだ。京都人の論理を外国で理解してもらうのは難しいだろう。同じ関西人の僕ですら受容できないくらいだから。
　京都は「近くにある外国」である。
　
④大阪府 
　神戸市民として生まれ育っていても、大阪の影響を受けないことはほぼ不可能と言ってよい。
　僕自身をとってみても、母方の祖父母は長く大阪で商売していたし、母も大阪で生まれている。父は但馬出身であるが、大阪に勤務していたこともあり、大の大阪贔屓である。「横浜が大阪より人口が多い」と事実を述べただけで殴られたことは忘れられない。
　また、職場の同僚にも大阪出身者や大阪の大学出身者が半分くらいはいたし、マスコミ的にも、「神戸は大阪の一部」的な語られ方をすることが多い。
　だが、確かに大阪は最も近くにありながら、「神戸とは違う」のだ。７0年近生きてきて、そのことは自信を持って言える。
　僕にとって、長く大阪は「日帰り観光地」であった。大阪城だったり、梅田界隈だったり、日本橋だったり、たまに行くことはあっても、決して泊まることはなく、行って帰るだけ。人と触れあうこともなければ、文化にどっぷり浸かることもない。
　そんな事情に変化が生じたのは、京都の下宿になじめず、父親の勧めで大阪の吹田に居を移した大学３年のときである。
　吹田には「国鉄官舎」の団地があった。かっての「国鉄王国」にも、陰りが生じ、大赤字を世論にたたかれる中、「人員削減」によって、この団地にも多くの空き家があった。　その中の一室を父が借り、僕が下宿として利用することになった。２Ｋという間取りだったが、一室はほぼ使わず、ホコリがたまっていた。だが、風呂や湯沸かし器があったり、コンロも使え、京都の下宿とは利便性が段違いだった。ここに小さいながら冷蔵庫と洗濯機を置いたら、もう世帯を構えたような実感があった。冷蔵庫と洗濯機を買ったのは、吹田駅前にあった「ミドリ電化」である。現在の「エディオン」の走りだ。
　団地内には「片山ストア」という小さいスーパーがあり、たいていの買い物はここで間に合った。就職１年目も含めた３年間の「半自炊生活」、これが現在の一人暮らしのいわば基盤になったことは否定できないだろう。あの自由度に僕は憧れ続けながらも、それが実現するまでには30年以上を要したのだった。
　吹田と言ってもニュータウンではなく下町だった。たまに市場に買い物に行くと、店のおばちゃんに声をかけられた。買った品物で晩ご飯の献立を当てられるのはちょっと不愉快だったけど。（笑）
　阪急電車吹田の隣駅は「関大前」。一度、こっそり学生のフリして関大のキャンパスに潜入したことがある。大学生協のカフェでお茶していると、やっぱり自分の大学とは様子が違った。何と言っても女子の密度。ピンキリとは言いつつも、この華やいだ雰囲気は何だ。「脇目も振らず研究に打ち込みたい」なんて自分の気持ちがニセモノだったことに嫌でも気付かされた。
　その後、大阪はまた「日帰りの地」に戻った。あの１日を除いて・・・
　あの日とは、結婚式の日。神戸で結婚式と披露宴を終えた僕たちの宿は、大阪駅前にできたばかりの「アクティ大阪」。だが式と宴のストレスか、それとも慣れない整髪料のせいか分からないが、僕は頭痛がガンガンで、その夜はそのまま寝てしまった。だから、実質の新婚初夜は大阪ではなく、新婚旅行先の上高地だった、という笑えない話。
　大阪と無縁では生きられないと思いつつも、大阪に染まりたくない、と思って生きてきた。とりわけ、維新に牛耳られた現在の大阪は好きになれない。万博否定論者ではないが、今回の大阪万博には食指が動かない。ＥＸＰＯ７０’には、夢があった。家族と学校で１回ずつ行っただけで、人気のパビリオンには入れなかったものの、未来には何かある、という期待感があった。だが、今は・・・「これ以上何が便利になるのさ」「もう何も要らない」という満腹感のみ。
　そんな僕にも断片的だが、いろいろな光景が蘇る。
　大学時代、施設見学で行ったのは、熊取町の原子炉実験所、高槻・阿武山の地震研究所。
　友人達と行った「造幣局通り抜け」の花見。
　四條畷までおんぼろのママチャリで行った「大阪市立大学附属植物園」。
　囲碁の大会や高校囲碁大会の引率で通ったことも。
　東大阪の花園まで神戸製鋼のラグビー試合を見に行ったこと、帰りは走って帰った。
　パソコンの黎明期、ハードやソフトを求めて自転車で通った日本橋のでんでんタウン。
　金剛山、生駒山、岩湧山、和泉葛城山、登った山も数々・・・
　関空にもたびたびお世話になった。
　そして、一番インパクトの強い思い出は、学生時代の終わり頃、終電を逃して迷い込んだ千里ニュータウンのダンジョン。　
大阪は僕にとって「バブルの地」。何かがはじけては消えた。
　そして、今も僕は大阪とつながっている。それは「プール」。
　「エルモ西淀川屋内プール」に月１回程度通う。普段行っている「常磐アリーナ」と何が違うかというと、まず「空いている」、そして底がタイル張りじゃないので滑らず水深が浅くてウォーキングがしやすい、「ジャグジー風呂」があるなどのアドバンテージがある。だから交通費がかかっても行っている。残念なのは、監視員のスタッフが以前は水着の女の子だったのに、今はジャージ姿の男になってしまったこと。（涙）
　それから、高速バスの発着場所としても梅田を利用している。
　つかず離れず、これからも大阪を愛していきたい。　 
⑤滋賀県 
　滋賀県に初めて入ったのはおそらくあのときだ。
　1963年の秋だったと思うが、翌年の開業を控えて、東海道新幹線の試運転が行われていた。国鉄ファミリーの恩恵で、僕は父と一緒にそれに乗ることができた。
　新大阪から乗車した。在来線と違ったのは音と揺れが少ないこと、そして、車窓から見る景色の動きの速さ。田んぼの畦の方向が変わるのがあっと言う間だったのを憶えている。
　米原で下車し、帰りは在来線で帰った。もちろん米原駅では改札を出なかったので、観光したわけではない。
　次に縁が生じるのは大学生になってから。大津に大学の「臨湖実験所」があり、そこに実習に行ったのが３回生のときだったと思う。どんな実習をしたかはよく憶えていない。また、「日帰り」だったか、「宿泊」だったかもよく憶えていない。
　それ以降はしばらく縁がなかったと思う。就職して結婚したばかりの頃、両親と妹二人の家族も含め、「紅葉パラダイス」に一泊旅行した。遊覧船に乗ったのを記憶している。
　初めて「琵琶湖以外」の関係が生じるのは「登山」および「スキー」だった。
　比良山。武奈ヶ岳にはもう何度登ったろうか。友人と３回、単独で１回、山岳部引率で２回、計６回は確実に登っている。周辺の山、蓬莱山や釈迦ヶ岳、堂満岳なども含めると10回以上は間違いなく登っているだろう。この間、避難小屋や売店もなくなり、ロープウェイも廃止され、この山域はどんどんさびれてしまっている。
だが、今でも「びわこバレイスキー場」は健在である。個人で１回行った後、山岳部の引率で２回利用させてもらった。神戸から一般交通機関で行くには一番便利なスキーリゾートである。（六甲人工スキー場は別にして）去年と今年、孫を連れて久しぶりに行ってみた。インバウンドも含めてとんでもない人出だった。当分潰れることはないだろう。
　登山で言えば、好きな山が「霊仙山」である、個人でも、山岳部でも複数回行っている。ついでに「醒ヶ井養鱒場」も覗いたり・・・三上山や湖南アルプスも訪れている。飯道山も素敵な山だった。あ、もちろん百名山の伊吹山も忘れてはならない。長男が１才直前、初めて歩いた山だ。
　京都府との境界に比叡山があり、滋賀県側から一度登った。ひなびた静かな登山道だった。
　H高勤務時代、職場の同僚と一緒に「琵琶湖一周サイクリング」に挑んだことも。テントでキャンプし、ロードレーサーで颯爽と駆け抜けた。
「滋賀県には琵琶湖しかない」とか、「琵琶湖の中に滋賀県がある」とか言われる。
　もちろん、日本一の琵琶湖をディスるつもりはないが、僕にとっては「山」とか「雪」の印象が強い。これからもお世話になりやす。　 
⑥奈良県 
　ぼくにとって奈良での最初の記憶は大仏でもなく鹿でもない。
　それは「奈良ドリームランド」である。
　かつては西日本最大のテーマパークとも言われたこの施設。
　幼少時（年齢ははっきりしない）に家族と一緒に訪れた記憶がある。家族と言っても、父母ではなく、祖父母だったような・・・また、妹が一緒だったかどうかもはっきりしない。要は朧気な夢のような記憶、まさにドリームランドだ。（笑）
　園内を馬車が通っていたような気がする。ドリームランドの記憶がはっきりしている読者はそれが真実だったかどうか教えてほしい。
　この施設は、2006年まで存在したらしい。2006年と言えば、僕はすでに51歳に達している。だったら子供と一緒にでも行けたはずだが、残念ながらそれはなかった。
　次なる記憶はおそらく皆様と同じ、興福寺、春日神社、東大寺、そして鹿である。家族旅行、学校の遠足等で何回も行っている。「柱の穴くぐり」も何回もしている。嫁とのデート、そして熟年以降、写真撮影に単独でも訪れている。
　この頃は外国人観光客で賑わっているらしいが、僕が一番好きなのは大仏でも鹿でもなく、仁王さんすなわち「金剛力士像」だ。あの技術力と芸術性には外国人も真っ青である様子がYouTubeに度々上がっている。
　法隆寺には一度行ったが、いつ頃かの記憶がない。薬師寺に行って、故高田好胤管主の話も聞いたことがあるが、それも時期ははっきりしない。
　ある程度年齢がいってからは、奈良市よりも「飛鳥」が好きになった。「火の鳥」の影響もあるかも知れない。あの田園地帯に拡がる不思議な遺跡群には何故か心惹かれる。個人でも、家族でも、遠足の引率でも行った。サイクリングもなかなか楽しい。
　そして奈良の「山」との縁が始まるのは、S高に転勤して登山を始めた頃だ。いきなり単独行で大峰山に挑み、道迷い、沢登り、高巻き、藪こぎ、と洗礼を受ける。このとき泊まった稲村小屋には30年以上経って、「奥駆け」で再び訪れることになった。もちろん、主人の「代」は代わっていた。
　大峰山脈には、その後も山岳部の引率、友人との山行などで何度も足を運ぶ。近畿最高峰、八経ヶ岳にも三度くらい到達している。
　大台ヶ原では初めての本格的なテント泊を経験し、名物の大雨にたたられた。
　百名山達成後は「奥駆け」で、和佐又山や行者還岳なども通過した。
　三百名山を志した後は釈迦ヶ岳にも挑んだ。ちょうど還暦のときである。豪雨災害でバスが運行中止、止むを得ず２代目ピンクちゃんで行者還トンネルを越えた。民宿での登頂兼還暦祝いはよい思い出だ。
　　阪神なんば線が開通してからは吉野の桜も観に行った。確かに規模的にも見事なのだが、フォトジェニック的には奈良市内の桜の方が好みだ。
　また、暗（くらがり）峠経由で生駒山にも登った。思いがけず、山頂は遊園地だった。
　大和葛城山は奈良県側から登り、大阪の千早赤坂村に下りて来た。シュウカイドウの大群落は忘れられない。
　長男の嫁が奈良県出身という縁にも恵まれた。
　だがやはり、奈良県のキーワードは「山」である。「山ごもれる、大和し美わし」と日本武尊氏も言ったらしい。次なる予定がないのが悲しいが、きっとまた行くことだろう。　
⑦和歌山県 
僕のルーツの半分は和歌山にあることは以前にどこかで述べた。
　和歌山と言っても、和歌山市ではない。
　和歌山市は「まだ観光していない県庁所在地」のうちの一つである。ちなみに他は山形市、水戸市、千葉市、さいたま市、山口市、佐賀市で、これらは三百名山終了後に巡ってみたいと思っている。
　母方のルーツが存在するのは「南紀」である。
　西牟婁郡すさみ町・・・地名的にはそういう名称だ。アドベンチャーワールドなどで知られる白浜町の少し南になるが、潮岬のある串本町よりは少し手前になる。あまり観光資源もなく、地味な場所だ。
　幼少時より母方の祖父母に連れられて何度か訪れているらしいが、最初の記憶は小学校１年か２年のときである。そのときは祖母の実家のある和深という集落を訪れた。海から少し坂を登ったところにその家はあった。このとき、曾祖父や曾祖母も存命で、実際に会っている。曾祖父は元船長だったとかで、かくしゃくとしていた。曾祖母は「ぎょうさん食べやんしぇよ。」（和歌山弁で、「たくさん食べなさいよ。」）が口癖だった。そのとき、他の親類の子供も来ており、一緒に海に行って貝獲りをした。その地方では「まげ」と呼ばれる小さい貝類は、塩ゆでして食べると美味しかった。
　その次の記憶は中学校１年のときになる。祖父に連れられ船に乗り、まずは白浜温泉へ。「白浜御苑」という高級旅館で、それまで食べたことのないようなご馳走を食べたり、「痛セクスアリス」で述べたが、混浴露天風呂の体験をした。その後向かったのは祖父の実家がある、いやかつてあった里野という集落。和深には国鉄の駅があったが、ここは駅と駅との中間で、交通の便の悪い場所。祖父はタクシーを使ったが、後日父と墓参りに訪れたときは、長い距離を歩かされた。
　かつては僕の本籍地であるこの場所は、祖父の里だったが、戦前から家を出て大阪方面に行っていた間に、農地改革のどさくさに紛れて親類に農地や宅地を奪われ、僅かな空き地が残されていただけだった。父はこの土地に国鉄から払い下げのあった貨物列車の貨車を２両置いて改造し、墓参りのときに泊まる別荘代わりにしていた。海水浴以外にすることのない別荘というのもハンパなものだが、こいつが後に思わぬはたらきをすることになる。時は再びとんで大学１年生のとき。やはり祖父と共に墓参りに訪れ、このときは遠い親類の家に泊めてもらった。風呂が五右衛門風呂だったのを憶えている。
　それとは別に、７月の初め、「自然科学ゼミナール」の夏合宿で白浜にある大学の「サマーハウス」に１週間ほど連泊することになる。大学が夏休みに入る１週間前を狙って、授業をサボって行くので、よく空いていた。「研修」は適当に切り上げ、海水浴や魚釣り、麻雀に興じていた。この合宿は４回生まで４年連続で行ったので、管理人の老夫婦ともすっかり顔なじみになってしまった。もちろん我々は野郎オンリーで、女子学生と一緒に来ている連中が羨ましかった。ビキニの女子学生はただただ眩しかった。でも、夜中に海岸に繰り出し、誰かのギター伴奏で夜が明けるまで歌いまくったことは忘れられない。
　♪　街の灯りがとてもきれいねシラハマ、ブルーライトシラハマー
　４回生時には、すぐ近くにある大学の「臨海実験所」での実習に参加した。こっちは・・・もちろん真面目にやりましたよ。（笑）貧乏学生で旅行なんてできなかった僕には、学生時代の貴重な思い出である。
　「貨車別荘」には、結婚後も家族を連れてときどき行くことになるのだが、あるときエポックが訪れる。それは1985年から1986年にかけて回帰した「ハレー彗星」である。
　天文学にはあまり興味はないとはいえ、当時「地学教師」だった僕はスルーするわけにはいかなかった。同僚と近くの山に繰り出し、観測を始めた。生憎、大接近ではなかったため、「肉眼で辛うじて見られる」彗星を、双眼鏡で追いかけていた。だが、やはり少しでも空の暗い場所で見たいと、同僚の車で南紀の別荘に向かった。ところが・・・生憎の曇天・・・夜半には雨まで降り出した。同僚達との酒盛りは楽しかったが、目標は達成できず。後日、まだ１歳の長男を連れて向かった。このときはお天気に恵まれ、肉眼ではっきりと尾を引く様子が観察できた。長男には・・・まだ無理だったが・・・
　その後、晩年の父は親類との土地トラブルなどを解消するため、貨車を置いていた土地をそのままそっくりすさみ町に寄附したようだ。墓も神戸に移し、南紀と鈴木家の縁はほぼなくなった。世話になった親類なども死に絶えたことだろう。
　H高勤務時代は、学年旅行で那智勝浦に行ったりもしたが、和歌山県とはすっかり疎遠になった。だが、「熊野古道」には一度行ってみたいし、まだ縁が切れたとは思っていない。　 
⑧三重県 
　三重県を近畿に入れるか、中部（東海）に入れるかについては議論の余地があるが、言葉が関西アクセントであることから、僕は近畿に入れたい。
　三重県内の主たる交通機関は「近鉄」だし・・・
　大部分の神戸っ子にとって、「初めての三重」はアレに違いない。
　小学校の修学旅行、半世紀以上前には、「伊勢参り」が定番だった。
　どこかで書いたと思うが、「人生で一番楽しい」修学旅行だった。憧れの女子と列車で同じボックスになり、思う存分おしゃべりできたのだから・・・
　列車は草津線経由だったのを憶えている。伊勢市に到着後、貸切バスに乗り換え、まずは外宮、ついで内宮へ向かった。五十鈴川に手を浸したのは憶えているが、神宮の映像は甚だ曖昧である。式年遷宮の説明は受けたと思うが・・・
　二見浦近くの旅館に泊まった。夫婦岩を観に行ったのはその日だったか翌日だったかはっきりしない。食事は給食とレベルの変わらない程度のものだったが、お腹が空いていたのか、ご飯をお替わりしたと思う。
　夜は枕投げを愉しむ予定だったが、先生が監視に来てできなかった。その代わりに僕等がしたのは「枕隠し」。誰かがトイレに行ったすきにその子の枕を自分の寝床に隠してしまう。そしてもちろん狸寝入り。「あれ、枕がない！」嘆くのを見て笑いをこらえる。お前も悪よのー。
　二日目には真珠島を見学したこと以外憶えていない。あれから半世紀以上経っても、未だに真珠には縁のない豚生活である。（苦笑）
　だが、この修学旅行以降、三重県とは縁がなかった。
　次なる機会は結婚後、子供連れで「赤目四十八滝」を訪れたとき。長男だけだったか、次男も生まれていたかについてははっきりしない。この赤目四十八滝には、その後二度も訪れている。一度は友人Fを同僚H君の妹さんと「お見合い」させたとき。このカップルは結局成立しなかった。３度目は自分一人だった。このとき初めて四十八滝全部を踏破した。
　その後、「環境教育研究会」で長良川をボートで下り、長島の「河口堰」に達した。このとき、木曽三川何とかパークも見学している。
　意外に思われるかも知れないが、三重県には百名山こそないものの、二百名山が１座、三百名山が４座もある。それらを制覇順に並べてみると、
　倶留尊山・・・2013年10月。ススキの草原を登って山頂へ。山頂は有料だった。
　御在所岳・・・2014年10月。ちょっぴりスリリングな岩登りを制して山頂に達したが、そこにはリフトが来ていた。下りはロープウェイを使った。
　藤原岳・・・2014年11月。暴風雨を避難小屋でやり過ごしまん丸い山頂へ。カルスト地形と地紅葉が美しかった。御池岳まで足を延ばし、それが棒になった。
　高見山・・・2016年5月。二代目ピンクちゃんとともに向かう。お天気最高だった。
　三峰山・・・2017年１月。雪中登山だった。積雪程々でなかなか楽しかった。
　どの山も登りやすく、御在所と藤原以外は日帰りでも行ける。
　その他、B＆Bを利用して、山のついでに「女高野」とも呼ばれる室生寺にも行った。建物が想像よりも小さくて少し落胆。
　こうしてみると、伊勢神宮を別にすると、三重県の観光の目玉とも言える鳥羽シーワールドや志摩スペイン村、伊賀忍者村などには行っていないし、伊勢エビやアワビ等のシーフードとも無縁である。将来的には・・・どうだろう？　
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