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(18)チョイ悪オヤジ南佳孝
 皆さんはJ-POP界黄金世代に二つの「派閥」があるのをご存知だろうか?
 と言っても、これは私が独断と偏見で「発見」したもので、異議を唱える方もおられるに違いない。異論や反例をお持ちの方は是非ご一報願いたい。

 A派に属する代表的なアーティスト
  中島みゆき、さだまさし、井上陽水、吉田拓郎、伊勢正三、イルカなど。
 B派に属する代表的なアーティスト
  松任谷由実、山下達郎、桑田佳祐、大貫妙子、来生たかおなど。

 ご覧になれば分かるように、Aの方は、「フォークソング」の流れをくむローカル派なのに対して、B派の方は「フォークソング」を否定して新しいトレンドを生み出したシティ・ポップ派である。
 この両者が「仲が悪い」とする証拠は多くはないが、山下達郎が一方的にさだまさしを嫌っていて、ラジオ番組等で批判していることは事実。また、中島みゆきが先に「文化勲章」をもらったことにコンプレックスを抱いていた松任谷由実がやっと貰えて安堵したというニュースもあった。
 また私生活や歌詞の内容を比較しても、前者がシリアスに人生を捉えて真剣なメッセージを発信するのに対し、後者は「楽しければいい」的な享楽主義に走りがちだ。
 派内ではジョイントコンサートもときに行うが、この両派にまたがったジョイントはあまり聞いたことがない。「あるよ」と言う方はお教えいただければ、複雑な相関図が浮かび上がるかも?

 今回取り上げる南佳孝は、もちろんB派に属する。
 彼の曲をいつ頃聴き始めたか、はっきりした記憶がない。
 私が中古CD蒐集を始めたのは四十路を過ぎた頃だが、その頃にはすでに彼のアルバム「大航海図鑑」はあった気がする。
 南佳孝、1950年生まれ、やはり昭和20年代後半「黄金世代」に属する。
 東京二十三区出身だから、典型的な「シティ・ボーイ」、都会人である。
 東京都と神奈川県生まれを「都会人」と仮に定義すると、上記のA派にはあまりおらず、B派に多いのは確かである。
 関西では京阪神3府県が「都会人」に属するのかも知れないが、神戸生まれ育ちの小生は「田舎者」だと思っている。だが、生まれは下山手だから、どこかに「都会の名残」があるのかも知れず、「田舎者」とも「都会人」とも、完全にはなじめずに過ごしてきた。演歌は歌わないが、やかましいロックやモダンジャズは苦手である。
 南佳孝が大ブレイクしたのは、1981年頃、私が結婚する少し前か。「スローなブギにしてくれ」が同名の映画主題歌としてヒットチャートを駆け上がった。
 もっともその2年くらい前には「モンロー・ウォーク」がヒットしており、無名だったわけではない。
シンガーソングライターとしての実力はすでに評価されていたと言うべきだろう。
 この2曲、前者がスローバラードなら、後者はラテン風のノリのいい曲で、対称的だ。
 「スローなブギ・・・」は、この少し前に流行った矢沢永吉の「時間よ止まれ」にコンセプトが似ており、もしかしたらヒントを得たのかも知れない。また、来生たかおの一部の曲(例えば「浅い夢」)とも類似性を感じる。
 矢沢と同じく、南もメディア露出を好まない人のようである。テレビで歌っていたのを(多分「ミュージックフェア」)一度だけ視たことがあり、印象は「小太りのチョイ悪オヤジ」という感じ。実生活も多分そうだろう。違っていたらごめんなさい。
 小生の私生活とはあまりにギャップが大きく、その感覚を理解しようとするのは恐れ多いのだけれど、それでもどこかしら惹かれてしまうのは、私にも「シティ・ボーイ」の血が流れているのかも知れない。
 1978年に発表された「日付変更線」という曲をもう一つの代表作として取り上げよう。同名の曲が広瀬香美や中村雅俊にあるようだが、もちろん別物。
 この曲、作詞が松任谷由実である。作曲の方は誰々作曲というのを当てやすいが、作詞の方は難しい。とりわけこの曲の詞は「男目線」で書かれており、まさか、という感じだ。

 ♪置き手紙に気付いたら
  君は多分 溜息と
  数分だけ想い出をたぐる
  後は変わらず 生活(くらし)に戻る

  僕は浅い眠りから
  窓の外へと目を移す
  巻き忘れた 腕時計はずし
  海をへだてた日付にあわせる

  朝焼け 海流 スローな貿易風
  僕を明日へと運ぶものは揃った
  君の心を二度とは 捜さない

  恋の余韻欲しくって
  顔も見ずに出てきたよ
  君は君で生きるし 僕は
  君に似ている誰かに出逢う

  水鳥 スコール 遠浅サンゴ礁
  僕は昨日を洗い流し はばたく
  君の瞳を二度とは のぞかない

 これまで漠然と「太平洋航路の船上」の歌かと思い込んでいたが、よくよく読んでみるとこれから出かける内容になってる。(笑)
 豪華客船のデッキで日光浴しているビキニの美女にナンパを仕掛けるチョイ悪オヤジ。「紀州のドンファン」にならぬよう要注意。(笑)
 昼間の須磨海水浴場には恥ずかしくていけない、で、夜中に走る。

 (次は森山良子、かな?)
 
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