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(10) 玉置浩二の系譜
 最近視たTV番組で、「歌唱力ランキングトップ」に挙がっていた。
 もっとも、3位までしかないランキングだから甚だ信頼性に欠けるが・・・(笑)
 だが、一番かどうかはともかく、その歌唱力、いや表現力は日本の歌手では最高ランクに入ることは間違いない。プロの間でも評価は高く、山下達郎や大橋卓弥なども絶賛している。
 また、ソングライターとしても一流であることは疑いなく、他のアーティスト、例えばMISIAに提供した曲も秀逸である。
 バラード大好き人間の私から言わせてもらっても、彼は「バラードの帝王」と呼ぶにふさわしい。少なくとも「ロックミュージシャン」のイメージはないのである。
 北海道生まれ、農業高校中退という経歴をもつ彼だが、「安全地帯」というバンドは何と中学生のときに結成している。
 ほぼ同世代だが、私の同級生で中学時からバンドをやっていた連中なんてのは、世間から「不良」視されるのが普通で、まじめ人間の私とは遙か遠い世界であった。
 その中でミュージシャンとして生き残るためには、やはり「才能」、これに尽きる。

 安全地帯のメジャーデビューは鮮烈なものであった。「ワインレッドの心」、「碧い瞳のエリス」など、数々のヒット曲を連発する。
 当時のイメージとしては「お洒落なグループ」という感じで、かなり近づいてきたとはいえ、やはり自分からは若干の距離があることは否めなかった。結婚の前後で、お洒落になどこれっぽっちも関心がなかった頃だ。
 彼自身は、一般女性と結婚・離婚後、アイドル的人気のあった女優、薬師丸ひろ子と結婚する。
そして、息子も生まれる。そのまま順調に推移すれば、好感度ももっと上がったろうに・・・
 あるテレビの歌番組を憶えている。新曲「プレゼント」を披露する場面で、スタジオには息子が呼ばれていた。「お父さんのことどう思う?」という質問に、彼は「かっこいいと思う。」と答えていた。
 そのまま「かっこいいお父さん」であればよかったのに、間もなく彼は離婚する。
 そして、その妻との婚姻中、また石原真理子との「不倫騒動」。現在は元CCガールズの青田典子と夫婦関係にあるようだが、まあ彼女を最後にしてほしいものだ。
 有り余るほどの才能、イケてる風貌、女性にモテないはずはないが、そういう男性にありがちな「女たらし」の評判から彼も逃れられなかった。
 モテない男が何を言っても「ひがみ根性」としか取られないが、女性遍歴を繰り返す男に共通しているのは、「自分は男として魅力的だからモテて当然。」という意識である。
 学生時代、郷里に婚約者がいながら別の女性とデートしている同級生に、一言イヤミを言ってやると、彼はこう言った。
 「君とは違うよ。」
 そう、この「特権意識」こそが彼らを特徴づけるものであり、女性もまた、「モテない男」よりは「モテる男」に走る。「モテる男」を制することが女の勲章だと思っている。その結果、結婚はしたものの、数年後に浮気され、離婚という結末に至った女性を複数知っている。
 ある先輩の女性教師に言われた言葉をあらためてかみしめる。
 「くっつく男と女はいつも同レベル。」

 音楽に話を戻そう。
 私が感じる彼の魅力は、やはりバラード、それも超スローなバラード、ここにある。
 代表曲をいくつか挙げてみる。
   
   ♪コール
 
 眠れず 窓の外 夜明けを見てた
 独りぼっちで名前を 呼び続けてた

 (中略)

 いま叫ぶから
 声が聞こえたら すぐ
 ここへ来てほしい

 いつ聴いても癒されるナンバーだ。

   ♪プレゼント
 
 朝日が 静かに 君の手にふれる
 見上げた瞳に 空が生まれる

 ここにあるなにげない一日は
 いま僕から君へのプレゼント

 悲しいことも そっと抱いてごらん
 それは優しさに いつか変わるんだ
 この世界には 愛があふれてる
 幸せを願う その声に応えて

 (以下略)

 前後の「Ah、Ah」というスキャットは手に負えないが、本体のメロディーはとても歌いやすく、カラオケでは私の定番曲になっている。

 そして、最近あらためて惹かれている曲がこれ。

   ♪メロディー

 あんなにも 好きだった きみがいた この町に
 いまもまだ 大好きな あの歌は 聞こえてるよ
 いつも やさしくて 少し さみしくて

 (中略)

 きみのこと 忘れないよ
 いつだって 楽しくやったよ
 メロディー 泣かないで
 あの歌は 心から 聞こえてるよ
 
 (以下略)

 この歌、節回しがとても微妙で、正直歌いこなせる気がしない。玉置さんでないと完璧に歌いきることは無理なのではないだろうか。ひたすら聴いて、泣かされる一曲だ。

 その遍歴からして想像できるが、精神面で問題を抱えている人らしい。だが、それだからこそ、感情をふりしぼるようなあの楽曲が生まれるのかも知れず、まさに「天才と何とかは紙一重」なのだろう。
 最近はどうしているか知らないが、まあ精々体に気をつけて歌い続けてほしい。女遊びはほどほどにして・・・

 (次回は薬師丸ひろ子)
 
 
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