| 【MyFavoriteMusicianⅡ】 |
| （14)元祖インフルエンサー吉田拓郎 |
| 年齢は74歳、今年の誕生日で後期高齢者になるから、J-POPミュージシャンの中では大御所の部類になる。事実、多くのミュージシャンに絶大な影響を与えていて、フォークからニューミュージックに至る大きな道を拓いた人だ。 「よしだたくろう」とずっと思っていたら、現在は「吉田拓郎」らしい。ちょっとアンテナ低かった。 たくろうを初めて聴いたのは高校生の時だったように思う。 「結婚しようよ」という曲が巷に流行り出した。 ♪ 僕の髪が肩まで伸びて君と同じになったなら 約束通り町の教会で結婚しようよ 長髪嫌いの私の父が即刻激怒しそうな歌詞だ。事実、グループサウンズの頃から、テレビを視る度に「オカマ」と吐き捨て、すぐにチャンネルを変えてしまう父だった。 だが、このとき怒ったのは、父だけではなかった。私のクラスにも何名かいたが、いわゆる「深夜放送族」だった。 それまで、たくろうはラジオ番組や、小規模コンサートのみで出逢える「カリスマ」だった。そのファン達は「コア」であり、密かに宝物として扱われていた。 ところが、いきなりお茶の間にそれが飛び出したものだから、彼らは「一般大衆」に対して、「お前らにたくろうの良さがわかってたまるか。」と言いたかったのだろう。当のたくろうに対しても、「裏切り者」的な感情を抱き、コンサートで罵声が飛んだりもしたようだ。極端な場合、ファンを辞めてしまった者もいたであろう。 だが、たくろうはテレビ番組に直接出ることはなく、コンサート場面の中継が流れる程度だったように記憶する。それでもヒットチャートは確実に駆け上がっていったから、若者の支持の強さが分かる。 続けてヒットした「旅の宿」によって、彼の知名度は不動のものになる。だが、彼の大衆化は彼の原点にあるアングラ性であったり、アウトサイダー的なメッセージを薄めてしまい、未だに「お茶の間歌手」として彼を見ている人も多いに違いない。 コアなファン達の肩を持つわけではないが、仮にもたくろうを聴くのであれば、いわゆるヒット曲のみではなく、「人間なんて」、「まつりの後」などのコンサート曲も聴いてみれば少しは見方が変わるのではないだろうか。 私自身はといえば、大学生くらいまではそこそこ聴いていた気がするが、その後ほとんど意識の外になった。それは、彼の破天荒な生き方であったり、アウトロー的なメッセージが、自分自身のそれとは根本的に相容れないのが理由だったように思う。 だが、たくろう自身の歌からは遠ざかっても、彼が他のアーティストに提供する楽曲はいやでも耳にするようになった。皆さんもこれらは嫌でも耳になじんでいることだろう。 猫 「地下鉄にのって」 森進一 「襟裳岬」 かまやつひろし 「我が良き友よ」 中村雅俊 「いつか街で会ったなら」 KinKi Kids 「全部抱きしめて」 どれも親しみやすい名曲であり、言われてみればたくろう節、という特徴を持っている。 最初は絶対テレビには出ないというポリシーを貫いていた彼だが、気がつくと深夜番組等には普通に出ていた。例のKinKi Kidsとの番組なんかは視ておられた方も多いのではなかろうか。 肺がんとの闘病を経て復活し、現在もコンサート継続中、J-POPの旗手として今後も頑張ってほしいものだ。 一番好きな曲を挙げろと言われれば、これになるだろうか。カラオケでも練習中。（笑）元キーで歌えるのだが、出だしとサビとの高低差が大きく、難曲である。「聴きやすく、歌いにくい」のが彼の曲の特徴でもあろうか。 明日に向かって走れ ♪ 流れる雲を追いかけながら 本当のことを話してみたい いつか失った怒りを胸に 別れを祝おう （中略） だから 明日に向かって走れ こぶしを握りしめて ここには厭世的なものも、反体制的なものも一切なく、肩の力を抜いた処世観が見てとれる、 （次号は広瀬香美、にしようかな） |
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