板宿

退職までカウントダウンに入った頃、親の介護問題が生じた。 　母は長い病院生活の後死去したが、父親は実家で一人暮らしを続けていた。 　その父がボケ始め、妹と二人三脚で介護生活が始まる。 　やがて入院、そして半年後に死去。 　その死とほぼ同時に40年間の教師生活にピリオドを打った。 　介護生活のすったもんだの中で、実家のより近く、しかも近すぎない距離に住居を構える必要性が生じ、板宿に賃貸マンションを借りることに・・・ 　事実上の一人暮らしの始まりだった。 　もっとも、元々一人暮らし願望が強かったため、「渡りに舟」の意味合いもあった。 　板宿・・・関東人よ、「いたじゅく」と読むなかれ。 　典型的な神戸の下町であるが、須磨区であり、お隣の長田区と違ってそれほど治安は悪くない。 　板宿駅から歩いて西へ10分の新居からは、買い物の便も悪くなく、交通アクセスもよい。 　「住めば都」とはよく言ったものだ。 　数年のうちに、「かゆい所に手の届く」理想の住まいができあがった。そして日々進化中だ。 　ひょっとして人生で一番長く住む町になるかも知れない・・・

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