寺池町

震災を経てこの街の姿は大きく変わってしまった。寺池市場、室内商店街は過去の遺跡になった。「柳」「来々軒」「入船」といった名称に郷愁を覚える兵庫高ＯＢも多いと思うが、それらも今はない。 　建ち並ぶ復興住宅群は、古いこの街しか知らない者にあまりにも冷たい。かつてこの下町に暮らした人々は、あのコンクリートの建物の中で何を思っているのだろうか。 　長田区と言えば、かつて寅さん映画の舞台にもなり、「人情深い下町」のイメージが強いのだが、この寺池町周辺にそれが望めない今、どこへ行けばいいのだろう？ 　その答は500m西にあった。長田商店街。ここには昔と変わらぬ活気が満ちあふれている。高速長田駅から長田神社へと続く通りには、ダイエーを核として、生鮮市場、老舗の和菓子屋、安くてボリュームのあるパン屋、おかずバイキングのできるメシ屋、等々庶民に身近な店が並んでいる。ただ残念なことに、兵庫高校生の大部分は北区からの通学組であるため、ここを通ることがなく、界隈の雰囲気を知らない。 　東に目を向けると、すぐそこはもう兵庫区である。われわれ兵高ＯＢにとって忘れることのできないのが「会下山」。「かいしもやま」なんて読まないでほしい。由緒正しい神戸市民なら、ちゃんと「えげやま」と発音してほしいものだ。「帰宅部」所属のわれわれ友達仲間にとって、会下山公園は貴重なレクリエーションの場だった。小さなボール１つをめぐってはしゃぎあったあの頃にはもう戻れないが・・・ 　生徒として３年、教師として10年を過ごしたこの町、新校舎の横に同窓会館のできた今も、夢に出てくるのはあの旧校舎である。

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