懐かしの名場面

〜担任通信ダイジェスト〜

血液型交遊学（Ｂ型の巻）

わがまま、利己的、独善、非協調的、嘘つき、いいかげん、マイペース・・・・・これらはすべて、Ｂ型性格の代名詞である。 　「私の血液型当ててみて。」と言われたとき、その人が良い性格だと思ったら「Ａ型」、悪い性格だと思ったら「Ｂ型」、どうもはっきりしなかったら「Ｏ型」と言えば大概当たる。（ＡＢ型の変態二重人格だけは当てようがない） 　かくのごとく、性格の悪い代表のように言われるのがＢ型である。私自身、十分自覚しているつもりなので、これを否定はしない。ただ、一つだけ言わせてもらうなら、日本社会はＡ型のゴマすりとＯ型の馴れ合いによって成り立っているわけで、その中でＢ型の特性が実際以上に過大批判され、Ｂ型の持っているパワーが抑制されてしまっている傾向は否めない。私のようにあつかましいＢ型はそれでもしゃしゃり出ていくが、大部分のＢ型は周囲に理解されずにシュンとしているのが現実ではなかろうか。 　Ｂ型どうしは、お互いにマイペースだから、緊密な友情は成立しにくいと一般に良く言われるが、私にはＢ型の友人が決して少なくはない。かれこれ３〜４人はいるわけだが、どの一人をとっても、「さすがはＢ型」という個性の持ち主である。 　例えば元同僚のＡ氏。彼と一緒に話していると、「こちら」の話題になることはまずない。１時間でも２時間でも、とにかく「向こう」の話題ばかり一方的に喋りまくられて、はい、さようかと帰ってくる羽目になる。 　高校時代からの友人Ｆ氏。ことある毎に私のことを「独裁者」呼ばわりするが、自分のやり方の強引さには気付いていない。 　別の友人Ｉ氏。彼との話題は、大概共通の知人の悪口の言い合いになる。人を批判するのに歯に衣を着せないというのは、これまたＢ型の最大特徴である。 　これらのＢ男諸君とは、そこそこのつきあいレベルを維持してはいるが、それでも何かあるときにはすぐ声掛けて、とか、困ったことのあるときには相談して、という感じにはならない。それは一体なぜか、つらつら考えてみるに、自分と物の見方が同じ人間とのつき合いは、手の内が見えすぎて面白くない、ということが挙げられるだろう。共通の意志・目的で一気・一気に突き進むなら、これ以上に頼りがいのある相手もいないが、のんびりレジャーを楽しんだり、人生の悩み事を語り合うのには、すばらしく意気投合するが、一旦食い違い出すと、自分自身を鏡に映すように、相手の嫌な面ばかり見えてきて、疲れてしまう。 　恋愛においては、Ｂ男は思いこんだら一直線である。くだんのＡ氏など、ある女性を何と５年間も追いかけ回して、ついにものにしてしまった。（かくいう小生は４年追いかけて大失恋したので、彼にはかなわない。）だがＢ男は、競争相手がいて形勢不利になると、割にあきらめるのも早い。４年も５年も追いかけるなどというのは、はっきりしたライバルがいないからこそ成立する現象である。だからＢ男どうしで一人の女性を張り合うなどということはあまり考えられない。Ｂ男はもてないくせに結構プライドが高く、他人とてんびんに掛けられるのは嫌いなのである。 　また、Ｂ男はあまり妬き餅は妬かない。配偶者の浮気に一番寛容なのはおそらくＢ男ではなかろうか。（おっとこれはうっかり妻には見せられない）その代わり、相手がするなら自分も、という方向に行く可能性は大である。要するに相手を拘束もしないが、拘束されるのは嫌いなのだ。しかし、「その気」はあっても、モテないから、金や地位にモノを言わせるしか方法がない。愛人バンクに入れあげてる中年のオッさん連中にはきっとＢ型が多いに違いない。 　Ｂ男はあっさり、さらっとしているという人がある。かの「堅物」発言の女史などは、私のことを「一本気」だとも言ってくれた。しかし、それは見かけだけで、実際はそんな単純なものではない。表向きは一直線に突っ走っているように見えても、内心は相当複雑に錯綜しているのだ。力の無さを勢いでカバーしようとしているだけなのだから、だまされてはいけない。 　さて、Ｂ男とケンカする場合に注意することを述べよう。ちょっと、待った、その前に「ケンカしない方法」を言っておかないとならない。Ｂ男が最も腹を立てるときはどんなときか？それは確信を持ってやったことにケチをつけられたときである。どこの世界にも、自分はまるっきりビジョンを持たないくせに、人のやることにケチをつけることを専門にしている奴がいるものだ。十何年来だか、二十何年来だかの「慣行」を守ることだけに憂き身をやつし、「教育役人」根性丸出しの連中、こんな輩とはいずれ白黒つけてやらねばならない。それくらいの覇気はＢ男なら持つのが当然で、持てないようなら、単なる社会の迷惑、月給泥棒である。たとえ独りよがりと言われようが、一本筋を通しておかないと元気が出ず、能力が発揮できないのがＢ男の特性である。この筋道を意図的に破壊されると、たとえどんな日頃親しい相手であろうと、激高することがある。 　たとえ殴り合いのケンカになってもよい、わしゃＢ男のやることなすこと気に食わんのじゃ、という向きはそれで結構。ただ、ケンカした後、後に残る影響、これは知っておいた方がよい。 　Ｂ型の場合、ケンカをしても、感情は割合すぐに収まって、尾を引くことがない。翌日には案外ケロッとして、ケンカ相手とも普通につきあえる。ところが、ケンカのときに相手がどう言った、こうしたという事実ははっきり記憶に残っている。だから、それからしばらくして、また折り合いの悪くなったとき、 　「そう言えば、あのときはこうやったなあ。」と記憶が復活し、 　「てめえ、よくもあのときは恥をかかしてくれたなあ。」と、メラメラ炎が巻上がることがある。すなわち、「Ｂ型の恨みは突然ぶり返す。」 　これに対し、Ａ型というのははっきり違う。Ａ型の悪感情はひどく後に尾を引く。そればかりか、それが人物評価そのものになって、ネチネチと根に持たれる。だから、一度Ａ型を怒らすと、根本的には修復不可能である。「日常生活には支障ない。」が、不信感は決して消えないため、二度と再び蜜月関係には戻れなくなる。あな恐ろしや、Ａ型の執念。 　一方、Ｏ型はケンカに関しては最も寛容であると言ってよい。Ｏ型には、しばしば酒を飲んで言ったことややったことはさっぱり覚えていない、という人がいる。これを１００％額面通りに信じてよいかどうかは分からないが、確かにＯ型は、ワッと発散した後はこだわらないタイプが多いようだ。ただ、シラフの席でケンカしてワッと発散できなかった場合、酒席で復讐されることがあるのでご用心。 　ＡＢ型がひがむといけないから一言述べておくが、ＡＢ型のケンカに関する傾向は種々雑多で、正直言ってわからない。うちの親父のように怒るのを趣味にしているような者もいれば、どこそこの物理の先生みたいに、どれだけ周りにボロカスにやられても爆発することのできない気の毒な方もおられる。 　Ｂ男の話に戻るが、Ｂ男とケンカしたときは、ペコペコと謝る必要はまるでない。数日して、お茶か、お茶けでも一杯誘ってバカ話すれば、むしろ以前より親近感が増すことさえある。ただ、それ以降も、不必要に刺激を与えて、古傷を再燃させぬよう、くれぐれも・・・ 　Ｂ女の話に移りたい。確かわがクラスにはＢ女は一人もいなかったはずだ。その点、私としては書きやすいような、はたまた張り合いがないような気もする。ただ職員室には、いいかげんなこと書いたら張り倒してやろうと待ち構えているＢ女が約２名おられるようなので、もっぱらそっちの方に意識を向けて話を進めたい。 　さて、私の家族にはＢ女が２名いる。一人は母親であり、もう一人は二人の妹のうちの片方である。７年前に亡くなった祖母もＢ型だったから、私は幼少の頃よりＢ女に慣れ親しんで育ったことになる。だから、Ｂ女については、裏の裏まで知りつくしているはずだったのだが・・・世の中ままならない。 　Ｂ女の性格、これはＢ男と同じく、あまり一般受けしない。自己中心の女性というのは、ある意味では男性より悲劇的である。これが不美人であれば、初めから男は相手にしないから人畜無害だが、下手に美人であったりすると、これはロミオにハムレットをやらせたくらいに超ウルトラ悲劇である。誰がって、もちろん恋した男が、である。さんざん尽くしたあげくにポイと捨てられる。或いは首尾よく結婚にまでこぎつけたと思ったら、結婚後そのわがままさに振り回される・・・ああ・・・ 　あまりけなしてばかりでは何だろうから、少しはほめておきたい。Ｂ女は一旦ほれた男には、とことん尽くすところがあるようである。ようである、と書いたのは、私自身尽くしてもらった経験は全くないからで、私のよく知るＢ女がそう発言しておったという伝聞にしか過ぎないのだ。商売人の税金と一緒で、自己申告が正しいかどうかは私の関知するところではない。まあ自分の魅力に自信があるという男性諸君は、Ｂ女にほれさせてみてはどうでしょうか。それでは幸運を祈る。なお、この通信は自動的に消滅する・・・ボーーーーーーーー 　Ａ女は明るい方がよいと申しましたが、Ｂ女に関しては、私はどちらかと言えば暗い方をお勧めする。その理由――明るいＢ女なんてえのは、全く厚顔無恥、ド厚かましい、横着、けたたましい、節度がない、下品、箸にも棒にもかからん、てめえら人間じゃねえーーー 　それに対して、暗いＢ女は、どことなく神秘的な、男の心を惹きつけるものを持っている。やたらと愛想を振りまく女性より、ちょっとやそっとでは男になびかないような孤高な女性の方が好き、という男も結構多いものだ。そういうＢ女の、金属的とも言えるような堅い響きを愉しみたいというマゾヒスト的傾向をお持ちの男性諸君よ、共に同好会を作りましょう。そう、○○女史、もっと暗くおなりなさい、あなたはまだまだ明るすぎる・・・・ 　しかし、暗いＢ女を追いかけ回して、前述の如く冷たく見捨てられてもわたしゃ知らんよ。そのことは初めから覚悟の上で一生懸命恋愛しなさい。君たちはまだ若いんだから・・・・ 　前に少し触れたが、かつてＢ女に大失恋したことがある。その頃は血液型の相性なんて考えもしなかったから、ただ闇雲に突っ走って玉砕したが、今となってはああすりゃよかった、こうすりゃよかったと反省だらけである。まあ、仮にその恋愛が成就していたとしても、今以上に幸福かどうかは保証の限りではないが・・・ 　であるからして、現在ではＢ女に対しては、すべからく敬っては遠ざけ、はたまた適当にご機嫌伺って、男と女として、というよりも、同病相憐れむというか、兄妹の契りというか、日々空気中の窒素のごとく、おつき合い願っている次第なのである。今後も老人ホームの茶飲み友達のようによろしくおつき合い願いまする。 （Ｏ型の巻に続く）

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